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小惑星探査機「はやぶさ2」平成26年12月3日に打ち上げ成功、その後も順調

平成26年12月3日午後1時22分、小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げが成功しました。
鹿児島県の種子島宇宙センター(中種子町)から「はやぶさ2」を載せたH2Aロケット26号機が打ち上げられ、
地球を一周した後、同日午後3時9分、機体は高度約890キロの太陽を回る軌道に「はやぶさ2」を投入しました。
同年12月5日、JAXAは「はやぶさ2」が正常に飛行していることを発表しました。
太陽電池パネルを広げた「はやぶさ2」は、地球の公軌道近くを順調に飛行しており、搭載機器や地上設備も正常に機能しています。
平成27年3月3日、JAXAは探査機搭載機器の初期機能確認を終了し、小惑星「1999JU3」に向けた航行段階に移行したことを発表しました。
小惑星「1999JU3」への旅は6年、往復約52億キロメートルの飛行です。
行きは3年半、小惑星に1年半滞在、帰りは1年かかります。
太陽光等で風化していない地中の岩石を採取し、太陽系や生命の起源を探るのが目的です。
「はやぶさ2」が目指す小惑星「1999JU3」は炭素質のC型小惑星で、太陽系が誕生したころの物質が残っている可能性があります。
事業費は、打ち上げ費用を含め約289億円で、プロジェクトの研究者は約250人、協力企業は約300社にのぼります。
プロジェクトを統括する國中均氏は、JAXAの教授であり、イオンエンジンの専門家です。

●「はやぶさ2」を宇宙まで運ぶH2Aロケット26号機に関して
(南日本新聞平成26年10月8日・読売新聞平成26年12月4日によりますと)
打ち上げ業務は、三菱重工業が担当しました。
種子島宇宙センターでは、大型ロケットを打ち上げる際、2台の移動発射台が使用されます。
平成21年(2009年)からは、1台がH2Aより大型のH2B専用になりました。
平成26年10月7日に「ひまわり8号」を打ち上げたため、「はやぶさ2」の打ち上げ予定日(11月30日)までわずか53日しか
ない過密日程になりました。
そのため、三菱重工業は新たな準備工程を組みました。
従来は、全設備の点検後にロケットを組み立てていました。
しかし、今回はロケット組み立て棟の点検を優先し、射点周辺設備の点検とロケット組み立ては同時並行で進めました。
この工程により、1台の発射台から2カ月以内の打ち上げが可能になりました。
H2Aロケットの打ち上げは、今回で20回連続成功となりました。
飛行時間に関しては、2001年8月のH2A初号機から26機目にして、今回、過去最長の飛行時間を記録しました。
今回の打ち上げでは長時間の慣性飛行を行い、「はやぶさ2」を分離したのは地球を1周した1時間47分後でした。
長時間飛行が可能になると、衛星を遠くまで運べることができ、衛星の自力航行を助けることになります。

●「はやぶさ2」の打ち上げまでの経過と地球帰還までのスケジュール
(読売新聞9月1日・南日本新聞平成26年12月4日によりますと)
2014年8月31日 完成した「はやぶさ2」がJAXA相模原キャンパスで報道関係者に公開されました。
同年9月 相模原のJAXA施設から種子島宇宙センターに移動しました。
同年11月30日 打ち上げ予定日
同年12月3日 強風等の気象状況で2度延期され、この日に打ち上げられました。
2015年11月~12月 地球の重力を利用した「スイングバイ」予定
2018年6月~7月 C型小惑星「1999JU3 」に到着予定
2019年11月~12月 小惑星を出発予定
2020年11月~12月 地球へ帰還予定 試料を入れたカプセルだけを地球に戻し、本体は探査を続行する予定

●「はやぶさ2」のサイズ
(読売新聞平成26年12月4日によりますと)
大きさ 1m×1.6m×1.25m
重さ 約600㎏

●「初代はやぶさ」を改良し、進化した「はやぶさ2」
(読売新聞12月4日によりますと)
「はやぶさ2」は「初代はやぶさ」の後継機ではありますが、大幅に改良し、新しい機体となっています。
開発は3年半を要し、初代で故障が起きたイオンエンジンや姿勢制御装置に関しては、特に改良が行われました。
また、今回新しく、地下試料の採取のための衝突装置(インバクター)も付け加えられました。
NECは製造のとりまとめ役として、プロジェクトに100人以上が参加し、特にイオンエンジンの改良には力を入れました。
また、姿勢制御装置の製造には三菱重工業が、その他、小惑星の岩石採取に関わる装置にも火薬メーカーの
日本工機や住友重機械工業、IHIエアロスペース等、日本企業の製造力が結集されています。

●イオンエンジンについて
(南日本新聞平成26年12月4日によりますと)
イオンエンジンは航行の要となるもので、「初代はやぶさ」で世界初の実用化に成功しました。
キセノンガスに波長の短いマイクロ波を当ててイオン化し、電気の力で高速噴射させる仕組みです。
地上では1円玉を持ち上げる程度の力しかありませんが、宇宙空間では噴射し続けることで加速力が得られます。
イオンエンジンは太陽光を電力として使用するため、酸化剤を使う化学エンジンの10倍の燃料効率があり、省エネエンジンといえます。
しかし、「初代はやぶさ」では、トラブルが相次ぎました。
打ち上げ直後に1台が不具合を起こし、2台は約1万~1万5000時間稼働した後、動かなくなりました。
帰還直前にはすべてが止まる状態までになりましたが、機能している回路を地上からの指令でつなぎ合わせ、
エンジンを復旧させました。
エンジン不調の原因は、エンジン周辺が稼働時と停止時で100度の温度差が生じることでした。
この温度差のせいで、一部機器の内部の金属が剥がれて汚れがたまり、イオンが発生しなくなったためです。
今回の「はやぶさ2」では、耐久性を持たせ、金属剥がれを抑える工夫を施しました。
また、加速を生み出すガスの噴射方向の改善や、噴射量に無駄が出ない供給システムを設計しました。
ガス噴射口も1カ所から9カ所に増やし、推進力を25%増強しました。
打ち上げ前の実験で、約2万時間の運転を行い、問題なく稼働したということです。

●姿勢制御装置について
(南日本新聞平成26年12月4日によりますと)
姿勢制御装置はリアクションホイールと呼ばれ、円盤を回す遠心力でバランスをとります。
太陽電池パネルの調整や着陸時に使われます。
「初代はやぶさ」では、3台中2台が故障したため、「はやぶさ2」では4台に増加しました。
また、燃料漏れが起きたため、配管などの溶接方法を見直し、円盤を2層構造に改め、万一に備えました。

●今回の開発の最大の技術、衝突装置(インバクター)について
(読売新聞平成26年10月28日、12月4日・南日本新聞平成26年12月4日によりますと)
「初代はやぶさ」では、小惑星「イトカワ」の地表の岩石を採取しました。
太陽系の起源や生命の原材料物質を解明するためです。
しかし、地表の岩石は太陽にさらされて風化しています。
太陽系の初期の様子を残した試料としては、地中の岩石のほうが優れています。
そのために、今回の「はやぶさ2」では、小惑星「1999JU3」の表面に人工クレーターを開ける衝突装置が開発されました。
まず、小惑星上空で衝突装置(インバクター)を本体から切り離します。
その後、衝突装置(インバクター)の銅製のふたを弾丸代わりとして、火薬の力で秒速2キロメートルの猛スピードで発射します。
本体はその間、小惑星の破片などに当たらないよう避難します。
小惑星の地表に穴が開いた時点で本体は着陸し、岩石や砂を採取するという工程です。
衝突装置(インバクター)の中枢部分を開発したのは、火薬メーカーの日本工機です。
通常の火薬は砂状ですが、真空の宇宙空間で火薬が漏れることがないように、ドロドロの液状にし、隙間がない状態にしました。
本体が小惑星に着陸してサンプルを採取する装置は、住友重機械工業が担当しました。
サンプル採取容器開発には、九州大学理学研究院の岡崎隆司助教も参加しました。
岡崎助教は宇宙のガスやちりを研究しており、「初代はやぶさ」が持ち帰った微粒子の分析に加わった経験があります。
「初代はやぶさ」では、地球再突入の際に密閉されたはずの採取容器に大量の空気が混入してしまい、サンプル変質の可能性がありました。
今回はサンプル採取容器の密閉部分をゴムではなく、金属製にし、実験を重ねました。
容器は直径約12センチ、高さ約10センチの円筒形です。
岩石などを入れた収納庫を地球に運ぶための再突入カプセルは、IHIエアロスペースが作製しました。

●小惑星「1999JU3」について
(南日本新聞平成26年12月4日・12月5日によりますと)
今回「はやぶさ2」が目指す小惑星は「1999JU3」と表示されています。
地球から約3億キロの距離にあります。
生命の誕生に欠かせない水や有機物を含む鉱物が存在すると考えられています。
「1999JU3」は仮符号で「1999年5月1~15日にみつかった95番目の小惑星」という意味です。
この仮符号の読み方を説明します。
最初の1999が発見された年を表します。
年の次に表記されるアルファベットは、発見された月を表します。
1月前半がA、1月後半がB、2月前半がCとアルファベットが割り振られます。
ただし、Iは使用されません。
12月後半を表すY まで24種類のアルファベットが用いられます。
月の前半とは、常にその月の1日から15日までで、16日から月末までが後半です。
2番目のアルファベットとそれに続く番号は、発見月の前半か後半の順番を表します。
ここでも月同様に、アルファベットが割り当てられます。
1999JHという仮符号は、1999年5月前半に発見された8番目の小惑星を意味します。
この場合も、月同様、Iは使用されません。
一方、現代では半月内に25個以上の発見が普通になっています。
そのため、26番目以降の発見には A1、B1のように2番目の英字に数字の添字を付け、その英字が繰り返し用いられた回数を示しています。
1999年3月後半に発見された28番目の小惑星の仮符号は 1999FC1となります。

「初代はやぶさ」がサンプルを持ち帰った小惑星は「1998SF36」という仮符号でした。
はやぶさチームが米国の発見者と交渉し、命名権を譲り受け、打ち上げから3か月後の8月に「イトカワ」と名付けられました。
日本ロケット開発の父と呼ばれる故・糸川英夫博士にちなんだ名前です。
今回の「1999JU3」の命名権を持つのは、米国マサチューセッツ工科大学のリンカーン研究所チームです。
命名権の譲受に関しては、國中均JAXA教授はほぼ同意を得ているといい、名づけ方法に関し、公募も含め検討をしています。

●「しんえん2」について
(朝日新聞デジタル平成26年10月22日・12月23日、南日本新聞平成26年12月4日、日経新聞平成26年12月8日によりますと)
「しんえん2」は「はやぶさ2」とともにH2Aに相乗りした小型副ペイロード(搭載物)3機のうちのひとつです。
鹿児島大学大学院理工学研究科の西尾正則教授の研究チームと九州工業大学が共同で開発しました。
月の軌道周辺や、より離れた「深宇宙」と地球上との通信実現を目標とする通信実験機です。
直径50センチメートルの14面体で、質量は17.8キロあります。
強化プラスチックを使用し、軽量化に成功しました。
表面にソーラーパネルを備えています。
太陽を楕円形に周回する軌道に乗り、アマチュア無線の周波数で、0.8ワットという弱い電波を使い、
宇宙と地球の間でデータ交信を行うのが主な任務です。
平成26年12月3日の打ち上げ後、「しんえん2」は約1時間55分後、H2Aロケットから切り離されました。
3日午後8時ごろ、山口県内のアマチュア無線家が、地球から約10万キロメートル離れた「しんえん2」からの電波を受信しました。
鹿児島大学研究チームによりますと、地球と230万キロメートル離れた場所からの信号の受信にも成功しています。
12月22日午後4時には、地球から約760万キロメートルの距離に到達しました。
鹿児島大学は、通信・電源の制御装置を担当、九州工業大学は全体を制御するコンピューターの開発を担当しました。
九州工業大学の超小型衛星試験センターは、2010年に開設されたもので、地球と全く異なる宇宙空間を再現できる試験設備です。
超小型衛星や探査機の振動や衝撃など、宇宙空間での影響をチェックできる装置が備えられています。
放射線以外の過酷な宇宙環境を想定した試験が可能です。
同大学の開発拠点としてだけでなく、他の大学にも開放しています。