口永良部島の新岳が平成26年8月3日、34年ぶりに噴火
平成26年8月4日・5日・7日・12日・13日の南日本新聞、および平成26年8月4日・8日の読売新聞、屋久島町HPによりますと、
平成26年8月3日午後0時24分ごろ、屋久島町・口永良部島の新岳(標高626メートル)が噴火しました。
マグマが直接関与した「マグマ水蒸気噴火」です。
噴煙は800メートル以上で、噴石が新岳北西側斜面の7~8合目(300~400メートル)に達しました。
新岳の噴火は1980年9月以来34年ぶりです。
鹿児島地方気象台は噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引き上げました。
噴火の規模は中規模程度以上で、噴火は約6分半続いたとみられています。
一部地域で1~2センチ程度の降灰がありました。
火山性地震は5日の8回が最多で、7日や10日は0回。
(火山性地震:火山体またはその周辺で発生し、震源の深さが10kmより浅い地震のことで、
地下で何らかの破壊現象が起きて発生すると考えられています。阿蘇山火山防災連絡事務所HPより)
口永良部島は屋久島の北西約12キロに位置する火山島です。
東西最大12キロ、南北に最大5キロ。
住民は77世帯135人(本村69世帯124人、湯向8世帯11人 平成26年7月31日現在の住民基本台帳登録数)
屋久島の宮之浦港との間に町営フェリー太陽が一日1往復運航しています。
新岳の南にある古岳(657メートル)では数百年まで火砕流を伴う噴火が起きていました。
近年の噴火は新岳(626メートル)で発生しています。
新岳のこれまでの主な噴火
1841年8月 集落が焼け、死者多数
1931年4月 負傷者2人、馬や田畑に被害
1933年12月~1934年1月 七釜集落が全焼し、死者8人、負傷者26人
1966年11月 負傷者3人。空振を鹿児島市や種子島でも感じる。小規模火砕流が発生
1976年4月 北西約2キロ地点で降灰が約1センチ積もる
1980年9月 多数の爆裂火孔が新岳東側斜面に形成される
新岳の噴火警戒レベルは1~3の間で上下を繰り返していました。
2008年10月から09年3月は、地殻変動が続いたことからレベル3、
11年12月から12年1月まではレベル2となっていました
噴火後の動き
3日
13:00
屋久島町はに災害対策本部を設置し、口永良部全域に避難準備情報を発令しました。
火山警報レベル3を受け、火口から半径2キロを入山規制、
林道口永良部線の向江浜から湯向付近までの11㎞を通行止めにし、看板を設置しました。
自主避難行動により、番屋ケ峰に91人が避難しました。
14:00
島民・来島者の安否確認をすべて完了、人的被害はありませんでした。
爆発当時、島にいた住民は69世帯106人であることを確認しています。
来島者は大学生9人、工事関係者15人。
16:30
自宅警戒に移行し、番屋ケ峰から本村地区に住民は戻りましたが、降灰の激しい3地区(前田・寝待・田代集落)の住民は
安全確保後、一時自宅に帰宅するも、夜は本村のの保健福祉館に避難することになりました。
20:30
自主避難者35人(口永良部島福祉館:9世帯16人、口永良部出張所:島外者7人、シェアハウス:学生8人、
本村温泉:1世帯1人、島外者3人)
4日
11:35
自主避難者が町営船「フェリー太陽」で屋久島に出発し、13:25に宮之浦港に到着しました。
自主避難者の内訳は、島民37世帯64人と業者・大学生24人です。
到着後、屋久島町が避難所とした福祉施設「縄文の苑」に9世帯21人が避難しました。
親戚・知人宅へは28世帯43人です。
口永良部島に残った人は32世帯42人、防災関係者は消防団員10人、職員1人です。
15:00
鹿児島県は、県屋久島事務所とテレビ会議システムを利用し、防災連絡会を開催しました。
鹿児島地方気象台の職員と専門家を交え、状況や対策について情報を交換しました。
町より要望があったため、福岡管区気象台より出張所へ直接火山情報を提供することになりました。
関係省庁災害警戒会議も東京都内であり、気象庁や総務省消防庁などの担当者が情報交換しました。
5日
島内残留者に対して、消防団が体調確認と島外への自主避難の意思確認を行いました。
台風11号が近づいてきており、フェリーは6日以降、欠航する見通しだったためです。
体調不良者も自主避難希望者もありませんでした。
鹿児島県防災へり及び県警ヘリによる上空調査が行われました。
6日
気象庁は屋久島町・口永良部島の新岳を上空から調査しました。
その結果、火口北側がわずかに広がっており、火口縁南西側では新たな割れ目が見つかりました。
火口西側から南西方向約2キロにわたって樹木が焼き尽くされており、火砕サージ(注1)によるものとみられます。
屋久島町が避難所とした福祉施設「縄文の苑」への避難者数が増え、6日現在で12世帯22名となりました。
7日
気象庁は新岳に関し、火砕流が発生する可能性があるとして新たに注意を呼び掛けました。
気象庁は当初、マグマが関与しない水蒸気噴火(地下にあるマグマの熱で地下水が水蒸気になり、
地下の圧力が高まって爆発する噴火)の可能性が高いと説明していました。
しかし、産業技術総合研究(茨城県つくば市)が3日の噴火で発生した火山灰を分析し、マグマ由来の粒子を確認しました。
つまり、マグマが直接関与した「マグマ水蒸気噴火」であることが分かりました。
したがって、マグマが関与する噴火が発生した場合、火砕流を伴う可能性が出てきました。(注2)
そのため、規制範囲を拡大し、向江浜地区が規制区域に入りました。
噴火警戒レベルは3(入山規制)のまま変わっていません。
11日
08:50頃
向江浜地区で、大きな音の後、海が黒く濁りました。
土石流と思われますが、屋久島町HPでは「未確認」となっています。
気象庁職員も現地入りしました。
鹿児島地方気象台は、新岳の火口付近には多量の火山灰が堆積しているため、降雨時の土石流に注意を呼び掛け
ています。
鹿児島地方気象台は口永良部島・新岳の火山性地震の回数を訂正しました。
これまで同島に設置してある地震計の速報値として、噴火後は最大で1日62回発生としていました。
しかし、最大で1日8回と、訂正後しました。
回数が多くなっていた原因は、波や風などで振動が発生し、さらに台風の接近で影響が大きくなったため、地震波形と数えたことが
あげられます。
通常は複数のデータを比較し判断しますが、噴火後に火口から1キロ内の7地点のデータが得られなくなったことも大きな要因でした。
精査後の地震回数は5日の8回が最多で、7日や10日は0回。
3日の噴火前も地震回数は少なかったため、気象台は「同程度の噴火の可能性がある」と引き続き、警戒を呼び掛けています。
台風11号が通過し、町営船「フェリー太陽」が運行を再開しました。
屋久島の「縄文の苑」避難者全員とその他の避難者64人中42人が帰島しました。
島内避難の3人も帰宅しました。
13日
数名単位で、自主避難者が帰島しました。(12日も)
16:00
住民説明会が開催されました。
住民54人が参加しました。
参加機関:福岡管区気象台鹿児島地方気象台、京都大学防災研究所火山活動研究センター、
鹿児島県危機管理局危機管理防災課、鹿児島県熊毛支庁屋久島事務所、屋久島町
注1
火砕流とは、高温の火山砕屑物・水蒸気・火山ガスが高速で火山体の斜面を流れるものを呼んでいます。
(清水書院 『ひとりで学べる地学』)
火砕流・火砕サージ
火口から噴出した火山灰や軽石が一体となって地表にそって流れ下る現象が火砕流です。
その速度は10m/s~100m/s以上に達し、溶岩流よりも人的被害の危険性は高い。
その温度は1000℃から常温まで様々です。
火砕サージは火砕流ににていますが、流れの見かけの密度が小さく、砂嵐のような現象です。
火砕サージは体験者によって「横なぐりの暴風」などと表現され、建物を破壊し、木や電柱をなぎ倒す破壊力を持っています
(消防防災博物館より)
注2
2011年に約300年ぶりに噴火した新燃岳は、2008年に水蒸気噴火をおこし、3年後にマグマ噴火へと移行しています。
京都大学防災研究所火山活動研究センターでは、新燃岳の例を踏まえ、口永良部島の新岳も、溶岩を流すマグマ噴火の
可能性も示唆しています。