まだ梅雨は明けない。
雨は降ってはいないものの、今日も蒸し暑い。
授業を受けていても、集中できない。
僕はいつのまにか眠っていた。
「りょうた、寝ない!」と注意され、僕は「おかあさん、うるさいよ」と思わず口にしたらしい。
うちにいる気分だったんだろう。
クラス中の笑い声で、僕は目が覚めた。
眠気は吹っ飛んだ。
「あたしはりょうたのお母さんじゃないわよ」
理科の田口先生は、目を吊り上げて怒っている。
おかげで、僕は学校では田口亮太と呼ばれ、先生の息子になってしまった。