大きな木
学校の校庭に大きな木があった。
何の木だったのだろう。
イチョウでなかったのは確かだ。
そのくらいは、私も知っている。
5年生の頃だったか、小学生がみんな信じた噂があった。
ゴツゴツした幹に両手をあてて目をつぶり、木を押す。
その時、心の中で願い事を唱える。
嘘だと思いながらも、みんな一度はやってみた。
もちろん、私も。
子どもたちが木の周りを囲んでいた。
願い事はかなわなかったし、何を願ったかもおぼえていない。
ただ、学校に大きな木があったことは確かだ。
もしかすると、あの噂を流したのは、あの木かもしれない。