大きなヤカン
以前は、用務員さんが宿直室にいた。
今の呼び名は知らない。
その部屋を通ると、いつもヤカンが火にかけてあった。
口から湯気が湧いていた。
あんな大きなヤカンは、家にはない。
あのヤカンに、とんでもないものをいれてみたくなる。
たとえば、猫とか。
もちろん、火にかけるわけではない。
ヤカンのふたを開けたら、猫が顔を出したら面白いだろうに。
そんなことを考えて宿直室をのぞいていると、「こらっ」といつも怒鳴られた。
おじさんは、悪だくみを気付いているかのようだった。