体操着入れ

ランドセルの側面についているフックに白い袋がぶらさがっている。
体操着入れだ。
下校するときは手に持ち、振り回しながら帰った。
時にはサッカーボールのように、膝で蹴りながら歩く。
気分よく振り回し、川に落としたことがある。
小さい川とはいえ、降りていくのを私は躊躇した。
怖かったのだ。
その時だ、声が聞こえたのは。
「どうしたの。あれっ、落としたんだ」
こちらが返事をする間もなく、飛び降りて袋を拾い、斜面を駆け上ってきた。
「あっ、ありがとう」
体操着入れを胸に、私は赤くなりながら礼を言った。
礼を言っている私が男子で、相手が女子というのが少々恥ずかしい。

私の娘はあの時の女子のように、元気な小学生だ。