素直
今も残っているのだろうかと、思い出しては気になるものがある。
卒業記念制作で、あの当時、私たちは赤いレンガに字を彫った。
好きな言葉、大切な言葉だ。
私は「素直」という字を選んだ。
大嫌いな言葉だった。
そうはなるまいと思い、選んだのだ。
十二才の直観は正しくて、私は今も素直ではない。
しかし、素直の良さは、さすがにわかる年齢になった。
「お前もそうなるといいな」そう思いながら、担任の先生は私が彫るのを見ていたのかもしれない。