書店が専門店になったら
2016/08
洋服を選ぼうと考えたとき、いつも足を運ぶ店がありますか?
行きつけの店で選ぶ人もいれば、デパートで買う人もいるでしょう。
あるいは、駅ビルやショッピングセンターのような、店がたくさん集まった場所に行く人もあります。
満足できるものが見つかることの多い店を知っている、あるいは自分が迷った時、適切で親切なアドバイスがあれば
心強いにちがいありません。
それでは、本を買うときはどうでしょうか?
インターネットで注文するという人は、ひとまず置いておきます。
一般的には、大型書店に足を向ける人が多いと思います。
近所の、街の書店が減ったからという理由もあります。
大型書店というのは、便利です。
さまざまなジャンルが網羅されています。
しかし、逆に言うと、特定の分野に関して格段に品ぞろえが豊富だというわけではありません。
古書店というのもありますが、ここもまた、大型書店と同様、総花的な置き方です。
マンガ専門店もありますが、日本のマンガこそ驚くほどのカテゴリーがある割には、これも細かい専門とはなっていないように
思います。
私には、現在の書店は、和服も振袖から浴衣まで、洋服もカジュアルウエアから礼服まで、さらには寝間着までおいてある
衣料品店のように見えます。
本屋の形態をうんぬんする前に、書店自体が現在は消えつつあるのだ、そちらが問題だと反論されるかもしれません。
本が売れないのだからと。
しかし、書店の形態も含め、まだまだ可能性はあるように思います。
実は、私たちは、世の中にどんな本があるのか、よくは知りません。
現在出版されている本だけでなく、過去の優れた本に関してもです。
それを知るために、書店に行く人もいるでしょう。
しかし、たくさんの本が並んだ店の中を歩き回っても、結局何を選んでよいかわからないままということも少なくはありません。
一方で、目的を持ち、ある本を買うために書店に来る人もいます。
しかし、大型書店でも目当ての本があるとは限りません。
本が多量に出版されていてもるのですから、無理からぬことです。
したがって、ネットで本を買うという形態が増えつつあるとも言えます。
目的なしに来た人も、目的を持って来た人も、書店という空間で満足感がもっと増えたらと思うのです。
好きな本が多種多様という人は、そこまで多くはありません。
エッセイが好きな人、ノンフィクションが好きな人、歴史小説が好きな人、推理小説が好きな人、海外文学が好きな人、
大体、人は気に入った2つか3つのカテゴリーを持っている程度だと思います。
つまり、本こそ、洋服以上に、自分のカテゴリーに強い専門書店があれば、幸福になれそうです。
私の想像する専門書店です。
そこに行くと、本を選ぶだけではない楽しみが待っています。
また、読書初心者だけでなく、本に関しての強者もより満足できるところです。
本の虫とも言えそうな書店員は、あなたがわざわざ訊ねなくても、近ごろ出版されたばかりの面白い本を教えてくれるでしょう。
「これもお勧めですが、やはりあの本を凌駕するものはなかなかありません」と
何十年も前の素晴らしい本を教えてくれるかもしれません。
読書の楽しみは、こういった書店に行くことでもっと増していきます。
興味のある情報がいくらでも見つかるのですから。
つまり、人が外に出かけ、納得のいくものに対して金銭を払うという経済効果も出てきます。
書店の中にあるカフェでゆっくりとお茶を飲みながら、テーブルに備え付けのアイパッドで書店員が書いたお勧め本案内を
読んでいる人もたくさんいます。
ひとりで本を探すのとは違った楽しみがここにはあるのです。
出かけてきてよかったと思うはずです。
ハイキングに行って自然を楽しむように、書店に行って読書の楽しみを増やしてくることができるのですから。
専門書店と言えども、在庫が完璧にそろっているわけではありません。
しかし、他の楽しみがあると、取り寄せてもらうのを待つ余裕もできます。
その前に、こちらを読んでおこうという気持ちにもなり、別の本を買ってみたりもします。
それは書店員のおかげです。
専門書店の店員は、まるで初期の東急ハンズの店員のように、驚くほどに専門知識があるのです。
まさに本の虫です。
すでに絶版になっている本は、自分でアマゾンに注文するよりも、書店で注文しておくほうが便利な時もあります。
同じ本でも値段の差があるなかで、どの本を選ぶといいかを、書店員がアドバイスしてくれるからです。
能力の高い本の虫が集まって、専門書店を作っているのです。
ジムに行けば身体が鍛えられるように、書店に行けば自然と脳が鍛えられたり、楽しい気持ちになって気分転換ができたら、
これほど気持ちのいいことはありません。
書店で知り合った人と、仲良くなる機会もあるかもしれません。
なにせ、専門店ですから、かなり趣味は近いことでしょう。
多量の本が書店にあることは、もちろなん大切なことだと思います。
しかし、専門分野に特化し、好きなジャンルをもっと知ることに対して手助けしてくれるのなら、
その書店に本が少なくても大丈夫かもしれません。
注文して取り寄せてもらうだけでなく、インターネットの中古本注文機能が併設できるのなら、
その場になくても我慢できるようにも思います。
待つことができるかどうかは、それ以外の魅力がその書店にあるかどうかにかかっているのかもしれません。