Idea
02ten

かんたんな懇親のやり方
2015/05

ある集団、それは地域の会でも老人会でも趣味の会でもかまいません。
グループ内の懇親を深めるというとき、どんなアイデアを出すのでしょう?
特別に懇親会をすることもあるでしょう。
しかし、わざわざ日時を設定しても、人が集まってくれるとは限りません。
場所の確保から始まり、軽食をと考えたりしていると、裏方の人はうんざりします。
そんな時、いつも思うことがあります。
作家田中小実昌さんのことです。
彼は酒が好きで、もうひとつ、よくバスに乗っている人でした。
アメリカでもバスに乗っていたと書いた文章を読んだことがあります。

私が考える田中小実昌式の懇親は、バスに乗って、行きつけの呑み屋のような出会いを楽しむことです。
もちろん、酒を飲むということではありません。
出会いを楽しむことです。
行きつけの呑み屋の良さは、知り合いに会えることです。
つまり、その店に行って、ビールでも飲んでいると、誰か知り合いに会うチャンスがあるのです。
その店によく来る客に会う確率は、100%ではなくても、偶然よりはずっと高くなります。
会う約束をしていなくても、知り合いと会えるのは嬉しいことです。
だからこそ、人は行きつけの店を作るのだと思うのです。
居酒屋、スナック、バー、近ごろではカフェもそうかもしれません。

例えば、こんな懇親会です。
○○小学校前というバス停、何時発の○○行きのバスに乗る、ただそれだけです。
登校、出社の時間帯を外します。
集合するバス停でなくても、行先が同じであれば、自宅近くのバス停でもかまいません。
その際は、自分で時間を調整し、同じバスに乗ればいいだけです。
バスに乗ったら、終点までいきます。
同じバスに乗っても、貸し切りバスではなく、普通のバスですから、他の乗客もいます。
席に一緒に座れないこともあるでしょう。
しかし、終点までいくうちに、隣に座れるかもしれません。
最初から、同じ席でないところもいいのです。
終点で降りたとき、初めて現地集合になります。
そこで、また、帰りのバスに乗るのです。
ただ、それだけの会です。
バスは交通手段でもあり、また、会を開く場所でもあります。
時間もかんたんに設定できます。
バスの時刻表は決まっていますから。
こんな簡単な会合はどこを探してもないでしょう。
貸し切りバスではないので、出席する人数がわからなくても大丈夫です。
全員が出席した時、全員がバスに乗っても大丈夫かどうか、くらいを確認しておきます。
こんな奇妙な懇親会を数回開くと、会員はけっこう仲良くなれます。
一緒の空間にいて、行動すると、人は親しくなるものです。
裏方の人も、この会なら、さほど準備は必要ないでしょう。
軽食は、終点のバス停近くに店でもあればいいかもしれませんが、それは終点しだいです。

公共交通が赤字というニュースをよく聞きます。
廃止になると、みな騒ぎます。
その前に、このような公共交通の利用法もあると思うのです。
どこに行くというわけでもなくバスに乗るというのが、田中小実昌さんのバスの乗り方でした。
私もその点では彼の弟子かもしれません。