以前は出汁を毎回とっていたのだろうか
2015/04
鰹節と昆布のだしは、最高の味だと私も思います。
ただ、海老の殻から出た味わいも捨てがたいし、缶詰の帆立を取り出したあとの水分も旨み抜群です。
近ごろ、だしをとることをあまりに強調されると、ひねくれ者としては、疑問をもたざるをえません。
以前は、鰹節と昆布のだしを毎回とっていたのだろうか、と。
ありえないと思うのです。
なぜなら、鰹節と昆布は高級品であり、貴重品だったはずです。
毎日の食事に惜しげもなく使える家庭は、どれほどあったのでしょうか。
大正時代や昭和初期の料理本を読むと、味わい深くする様々なヒントがうかがえます。
牛肉こま切れをほんの少し入れることによって、コクを出す料理もあります。
あるいは、郷土料理の筑前煮(がめ煮)のように、最初に少しの油で炒めることによって、味をだしています。
けんちん汁も豆腐を炒めるときに、油を使い、あとは水です。だしは使っていません。
油揚げや干椎茸、ごま油その他、だし代わりになるものを上手に使っていたというのが、普通の家庭料理ではなかったかと
私は推測します。
鰹節と昆布のだしを使わなくていいといっているのではありません。
ただ、それを使わないのは和食の基本から外れているという考えは、少々頑なだと思うのです。
鰹節と昆布のだしに固執する人が嫌う化学調味料は、鰹節と昆布のだしが素晴らしいと思うからこそ作られたものだったに違いありません。
さあ、今日は豆腐を炒めて、冷蔵庫にある野菜を入れ、しょうゆ味のけんちん汁を作ってみませんか?