Idea
02ten

空住まい
2014/9

「仮住まい」の書き間違えではありません。
「空住まい」というのは、新しい職業です。
住む家を与えられ、決まった期間に、住んでいる家の物をすべて片づける職業です。
つまり、住むことになった家こそが、仕事の場です。
現在、空き家が増えています。
私の身近でも、亡くなった両親の家を片づけなくてはいけない人がいます。
「空き家」とは言いながら、人が住んでいないだけで、物はそのままです。
住めるような家であっても、貸すことができる状態になっていない場合のほうが多いのです。
経験のある人ならわかりますが、家一軒分を片づけるのは容易ではありません。
数日で済む問題ではありません。
近くに住んでいても大変ですが、遠距離だと問題はもっと大きくなります。
もちろん、現在、便利屋さんや、片付け業者がその仕事を代行しています。
しかし、ほかに選択肢はないものでしょうか。

そこで考えたのが「空住まい」です。
家のある地方自治体のゴミルールにのっとって、毎日少しづつ片づけていけば、高い処分費用はかかりません。
売れそうなものは、ネットで販売したり、フリーマーケットに出品したりもします。
無料だったらほしいという人もいます。
ひとつひとつ片づけていきさえすれば、いくら物が多くても、最後には確実に家を空っぽになります。
家の持ち主の関係者は、そこまで丁寧に片付けに関わっている時間がないことが多いのです。
それを代行するのです。

一般的には、生活を始めると、最初は物が少なく、だんだん物が増えるのが普通です。
この「空住まい」の場合は、最初は家に物が多く、最後は、何もなくなっていくことが要求されます。
住まいを確保できるということが、この職業の大きな利点です。
親の家から出てみたいが、住む場所がない。
一人住まいをしたいが、お金がない。
さまざまな理由で、住む場所を求める人はいるはずです。
もちろん、「空住まい」は長期の住居ではありません。
長くても半年です。
しかし、住まいが確保され、なおかつ片付けによる報酬があるのなら、この職業は魅力的です。
もしかすると、「空住まい」で転々と住居を変えていく人も出てくるかもしれません。