幼稚園に入ったら
2001/7
会社や組織に所属している人が、すべてを完璧にこなしているわけではありません。
セルフマネジメントという言葉を、私自身は「自分のことは自分でやれる」と勝手に訳しています。
こんな風に訳すと、まるで幼稚園生か小学生に向かって使う言葉のようですが、案外、とっても難しいことなのだと思います。
会社に遅刻しないで行くこと。
体調を管理し、仕事の質があまりぶれないようにするこ。
怠け者にならないようにすること。
先の予定を忘れないようにすること。
客だけでなく、社内の人に対しても、相手の立場にたって考えること。
こんなことですら、多くの人が苦労しているように思います。
大の大人ばかりの集団のはずなのに、社員の志気を高めることや、社員の健康増進にまで、会社はわざわざ専属の部署まで作って、知恵をしぼります。
ところが不思議なことに、組織にいない人に対しては、セルフマネジメントは、あたかも自力でやるのが当然といった風潮があります。
組織に所属しなければ、人は自由に生きていられる、と思っているかのようです。
普通の人間は、やはり、誰かの力を借りながら生きています。
大人になってもおなじです。
たとえば、親になるということは、いつのまにかできるというわけではありません。
「母の意識が薄い」と糾弾される場面を眼にしたときなど、心が痛みます。
訓練を受けなければ、仕事も親になることも、案外難しいものです。
幼稚園や保育園に入園すると、親は自動的に「こどものおかあさん、おとうさん」とみなされます。
当然と言えば当然のことなのですが、神経質な親もいれば、現場の先生が困り切ってしまう親もいるかもしれません。
「こどものおかあさん、おとうさん」として、「自分のことは自分でやれる」ように、楽しい訓練の場を考えてみました。
訓練というと、きつい、苦しいと思いがちですが、楽しみながらいつのまにか習熟するといえば、ああ、それならやってみたいとおもえるはずです。
もちろん、少しの我慢は必要でしょう。
組織に属さない人間も、自分の力だけでしゃかりきになるのではなく、肩の力を抜いて、こつこつと続けていくことを覚えること、そんなお手伝いを考えてみたいと思います。
たとえば、幼稚園や保育園に入る子どもを持つ親に「入園おめでとう、ここまで元気に育てられてよかったね」という趣旨のお祝いの会があったら、どうでしょう。
大げさなものである必要はありません。
お祝いしてもらうのは、子どもではなく、子どもを育ててきた両親です。
両親自身が、そういう会で緊張する自分に気がついたら、子どもに過度な期待をしないかもしれません。
やはり、子どもは親に似るものです。
神経質な人には、無理をさせない、ずぼらすぎる人には少しプレッシャーを与える、これこそが、会社でも組織でも知恵を絞っていることです。
会で、親がこれまでの短い子育てをふり返り、短いスピーチをしたら、何を感じるでしょうか。
決して、自分たちだけで子育てをしてきたわけではないことなど、自然に感じるかもしれません。
世話になった自分の両親や地域の人、病院の人などを思い浮かべられるでしょう。
自分は過ぎてしまったから、もういい。
自分とは関係ないから。
そう思わずに、かつては家という制度の中で機能していたことも、家からいったん離して考えてみたいと思うのです。