Idea
02ten

美術館巡り
2001/8
時間があったら、自由に美術館に行くことができます、今の私は。
ギャラリーに行くこともできます。
でも、体が弱ったら、この楽しみはどうなるのでしょう。
美術館が好きだった人は、どうしているのでしょう。

いくら美術館に行きたくても、「身内に面倒をかけてまで、行きたいわけではないし」と、あきらめる人が多いのではないでしょうか。
「病院の付き添いはしかたがない、お願いしよう」と思っても、「美術館巡りは贅沢だから」と思う人が多いような気がします。

家族からのプレゼントは、食事やものでなくてもいいような気がします。
ときどき、美術館に行って、お気に入りの絵をゆっくりと眺めて帰ってくる、そんなプレゼントはいかがでしょうか。
ただ、その付き添いを、毎日仕事で忙しい息子や娘、あるいは子育てで忙しい家族がしなくてもいいんじゃないかなと思うのです。
美術館に興味のない身内が付き添うのは、どちらの側にたっても不幸だと思うのです。
付き添ってくれる人が、「こんな絵を見ていて、なにが面白いんだろう」と思ったら、見ている側も興味は半減してしまいます。

便利屋さんの「ご依頼メニュー」の中に、病院の付き添い等はあるはずです。
墓参りの代行だってあるのですから、美術館の付き添いは、依頼すれば可能でしょう。
でも、こうも思うのです。
美術館やギャラリーに通うのが好きな人同士で、仕事が作れないものでしょうか?
元気な時は、支える側に。
年をとったら、依頼する側に。
付き添う人も絵が好きで、ただし、付き添いという仕事をきちんと理解してくれる人だったら、誰にとってもたぶん楽しい1日になるだろうと。

雨の日の美術館は、案外いいものです。
しかし、足が不自由になったら、雨の日は危険です。
傘を差し伸べてくれる人、体を支えてくれる人がいたら、その楽しみも可能です。
美術館の常設展も見逃せません。
人は少ないし、じっくりと鑑賞できます。
入場料も手頃です。
美術館や博物館は、そこにいるだけで感じられる何かがあります。
絵や何百年も昔の品物そのものでもなく、その時代の匂いが私たちのそばにたゆたってくるからなのかもしれません。