農業サポート製品開発、日本計器鹿児島製作所の転換
南九州市にある日本計器鹿児島製作所は、農業サポート製品の開発で注目されています。
害虫の大量発生を抑制する潅水タイマー散水器は、農薬を使用せずに、害虫防除の効果があります。
日本計器鹿児島製作所が宮崎県総合農業試験場茶業支場と共同開発した製品です。
茶農家の悩みは、病害虫であるクワシロカイガラムシの駆除でした。
この潅水タイマー散水器は、クワシロカイガラムシの卵が高湿度の条件下では孵化しにくいという特性を利用しています。
クワシロカイガラムシの防除には散水が有効であることが分かりました。
本装置を利用した結果、70~90%の防除効果が確認されています。
環境に与える影響も軽減できる利点があります。
コンパクトサイズの上、電池式(単1電池4本)のため、設置場所を選びません。
2010年3月の発売以来、2013年5月までに約8700台を発売しました。
鹿児島県内の茶農家が販売先でしたが、現在は埼玉、静岡県など他の茶産地への営業にも力を入れています。
2012年には、第4回「ものづくり日本大賞」で、製品・技術開発部門の優秀賞を受賞しました。
節水型防霜散水装置は、2013年に平成二十五年度民間部門農林水産研究開発功績者として表彰されました。
鹿児島県農業開発総合センター茶業部大隅分場の研究と協力して、0度制御という防霜法を使用したものです。
作物の周囲温度が氷点下になっても、水が凍る際に発生する潜熱を利用し、作物温度を0℃付近に維持し細胞の凍結を防ぎます。
散水した水を氷結させ、作物を保護する方法で、散水氷結法と呼ばれるものです。
潅水タイマー散水器はもともと、茶の防霜防止を目的に製造されたものです。
茶葉の防霜防止に関しては、防霜ファンや防霜ネットなどもありますが、最も効果が高いとされているのが散水防霜です。
水が凍る際に発生する潜熱を利用し、茶葉の細胞内の水分が氷るのを防ぎます。
一般的な潅水タイマー散水器は、温度が1度を下回ると自動的に散水を開始し、2度に上がるまで散水が続きます。
しかし、この方法を採用すると、10ヘクタール当たり1時間に1.6~3トンという多量の水が必要になります。
志布志市などシラス台地が広がる茶畑では水不足が慢性化しており、潅水型防霜では問題が多い現状がありました。
節水型であるとともに、散水によって防霜を行うために、0度制御が考案されました。
旧茶業試験場である、鹿児島県農業開発総合センター茶業部大隅分場が、茶葉の温度の変化や水の状態と
霜害の相関関係を分析した成果を利用した技術です。
大隅分場の実験により次のことが分かりました。
茶葉表面の水が0度以下でも凍らずに水の状態を保っている場合は氷点下3度程度も被害はない。
茶葉表面の水が氷結して氷点下1度以下になると凍害が起こる。
その結果から、氷点下0.4度以下に下がった時に100秒ごとに散水と止水を繰り返し、氷点下0.3度以上になれば散水を停止する
0度制御を開発しました。
この装置では、水量を従来より水量が60%少なくても霜害被害はないことが実験でわかっています。
この製品もまた、水不足に悩む農家に広く受け入れられています。
日本計器鹿児島製作所は1976年(昭和51年)、日本計器製作所の子会社として設立されました。
知覧町の誘致企業として立地し、超小型電気指示計器の製造から始まりました。
もともとはパソコン部品の製造会社でしたが、LEDの生産拠点の海外移転などで2000年代に受注が激減し、新規事業が必須となりました。
工場周辺の農家の要望を受けて、製品を開発することから新しい事業構造への転換を進めています。
参考資料
日本計器鹿児島製作所HP
日本経済新聞 2013年5月10日
南日本新聞 2013年12月5日、2014年6月23日