ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』を鹿児島大学井原慶一郎教授が新訳
平成27年(2015年)11月10日、春風社より、『クリスマス・キャロル』の新訳が発行されました。
訳と解説は、鹿児島大学井原慶一郎教授です。
これまでに日本で翻訳・出版されたチャールズ・ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』との違いは、
大きく3つあります。
1つ、『クリスマス・キャロル』が18世紀以降のイギリスの伝統の復活であることを意識した話し言葉で訳してあることです。
その伝統とは、クリスマスの時期、冬の夜長の炉端でお年寄りが子どもたちに話を、とくに幽霊話をすることです。
2つ、注釈をつけ、時代背景やディケンズが使用している言葉の背景を明確にしたことです。
3つ、『クリスマス・キャロル』の執筆意図を明らかにしたことです。
それは恵まれない子供たちを救うということでした。
ディケンズは1843年、貧困階級の子どもたちの擁護をイギリス国民に訴えるパンフレットの発行を計画しています。
それは実現しませんでしたが、友人への手紙の中に、別の腹案があると書いていました。
同年9月にロンドンの貧民学校を彼は訪れ、子どもたちの悲惨な有様に衝撃を受けています。
10月の講演で、彼は無智こそが悲惨と犯罪の根源であることを力説し、学問によって自尊心を身につけることの重要さを訴えています。
このような特色をもった今回の新版『クリスマス・キャロル』は、ディケンズの名作を味わえるだけでなく、
解説や注釈によって、もう一度深く『クリスマス・キャロル』を読み進めることができます。
解説自体が、十分に1冊の本となるもので、鹿児島大学の文学特別講義としてお勧めします。