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日本のロケット発射場の地、鹿児島県

日本にある2つのロケット発射場は、どちらも鹿児島県に設置されています。
JAXAに所属する、内之浦宇宙空間観測所と種子島宇宙センターです。
平成26年7月6日の南日本新聞、JAXAのHP、鹿児島ブランディング情報誌 Region No.35によりますと、
ロケット発射場が2ヶ所になったのは、発射されるロケット燃料の違いに由来します。
内之浦宇宙空間観測所は、1962(昭和37)年に、東京大学生産技術研究所の付属施設として、
鹿児島県内之浦町(現・肝付町)に開設されました。
主に宇宙科学研究を目的とする天文観測衛星や惑星探査機に使用されたのは、固体燃料ロケットでした。
一方で、1960年代、日本政府は実用衛星の打ち上げを急務としていました。
気象予測や放送中継などに使う大型の実用衛星を遠くに飛ばすには、液体燃料ロケットが必須でした。
大型の実用衛星を打ち上げるためには、米国の液体燃料ロケットの技術を使用する必要がありました。
そのために、内之浦とは別に、1969年、宇宙開発事業団の発足とともに種子島宇宙センターが
南種子町に開設されたのでした。

内之浦は固体燃料、種子島では液体燃料を使用しています。
燃料や操作などで一長一短があり、小型衛星の打ち上げの場合は固体燃料ロケットを、
気象予測や放送中継などに使う大型の実用衛星では液体燃料ロケットを使用しています。
わかりやすい比喩で言うと、固体燃料ロケットは「巨大なロケット花火」、
液体燃料ロケットは「ガソリンで走る自動車」に例えることができるそうです。
異なるロケットはそれぞれ進化を遂げました。
内之浦で育まれた固体燃料の技術は、種子島で打ち上げる主力ロケットHⅡAの補助ロケットにも生かされています。

内之浦宇宙空間観測所は、1962(昭和37)年に、東京大学生産技術研究所の付属施設として、
鹿児島県内之浦町(現・肝付町)に開設されました。
総敷地面積は704,345平方メートルです。
日本ロケットの生みの親とも呼ばれる糸川秀夫博士が発射場設置場所を日本全国から探し、
偶然立ち寄った内之浦の台地に注目して決まったと言われています。
ロケット発射場には、立地条件があります。
赤道に近い南の地域が有利です。
地球が自転しているため、赤道付近のほうが速いスピードで回っています。
少しでも赤道に近いところに設置するほうが、少ない燃料で遠くに発射することが可能です。
現在、日本の最南端は沖縄県ですが、1961年当時、沖縄はまだ日本に復帰しておらず、候補地に入っていませんでした。
他の条件としては、海に面した太平洋側であることや、周辺に人家や工場がないこと、漁業や船舶、航空機への影響が小さいことが
あげられます。
内之浦以前は、秋田県岩城町(現・由利本荘市)の道川海岸に施設がありましたが、廃止されました。

内之浦の施設は、1964年、東京大学宇宙航空研究所の付属施設となり、
1981年、文部省宇宙科学研究所(ISAS)付属の独立研究施設・鹿児島宇宙空間観測所(KSC)になりました。
現在は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)への統合に伴い、内之浦宇宙空間観測所と改称しています。
1970(昭和45)年、日本初の人工衛星「おおすみ」が内之浦から打ち上げられました。
世界では4番目の快挙でした。
2003年には、小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられ、小惑星イトカワの微粒子を7年かけて持ち帰りました。
2013年9月14日には新型ロケット「イプシロン」も打ち上げられました。
イプシロンは、日本では12年ぶりの新型ロケットです。
コスト高を理由に2006年に廃止されたM5ロケットの後継機で、打ち上げコストを削減するために、IT技術が大幅に取り入れられています。
内之浦では、平成24年度現在、天文観測衛星や惑星探査機が27機(主に宇宙科学研究を目的とする)、
S-310ロケットやS-520ロケットなどの観測ロケットが397機(中層大気や宇宙プラズマなどの研究用)の打ち上げの実績があります。

種子島宇宙センターは上に記した経緯で、1969年、宇宙開発事業団の発足とともに開設されました。
日本の宇宙関係者の間では通称「タネ」と呼ばれているそうです。
総面積約970万平方メートルで、これは東京ディズニーランドの約20倍の広さです。
鹿児島の南、種子島東南端の海岸線に面しています。
施設内には、H-ⅡAロケットやH-ⅡBロケットを打ち上げる大型ロケット発射場、
ロケットで打ち上げられる人工衛星や探査機を組み立て、試験をする衛星組立棟、衛星フェアリング組立棟、
増田宇宙通信所、宇宙ヶ丘レーダステーション、光学観測所などの追跡設備が整備されています。
1994年、初の純国産ロケットHⅡの打ち上げに成功し、これまでに146機のロケットが打ち上げられました。
実用衛星打ち上げで中心的役割を果たしており、HⅡAは18機連続で成功しています。

宇宙センターでは、事前予約をすれば、1日に3回、無料の施設案内ツアーを実施しています。
2003年から始まり、専任のガイドの解説付きで、所要時間は約1時間半です。
H-Ⅱロケット7号機の実機が展示されている大崎第一事務所、大型ロケット発射場(保安上の理由からバスの中からの見学のみ)、
発射場の打ち上げを完成する総合司令棟の3か所です。
直径が4メートルもあるH-Ⅱロケット7号機は、その機体の中に大型バスがすっぽり入る大きさです。
発射場の組立棟の高さは81メートルもあり、間近で見るとその大きさに圧倒されます。

種子島の子どもたちに対し、宇宙への関心を高める活動も行われています。
日本宇宙少年団南種子町宇宙分団という、宇宙をテーマにした少年団が南種子町にあります。
参加資格は小学校4年生から高校3年生までです。
また、毎月1度、小学校にJAXA職員が出向いて、「移動宇宙教室」という授業を行っています。
わかりやすく、面白い授業は小学生にも好評です。

2014年冬に、種子島宇宙センターから小惑星探査機「はやぶさ」の後継となる「はやぶさ2」が打ち上げられる予定です。
目指すのは、小惑星1999JU3で、小惑星イトカワよりさらに遠くに存在します。
太陽光の影響を受けていない地中の鉱物を採取し、2020年に持ち帰る予定です。
採取予定の鉱物には、水や有機物が含まれている可能性があり、人類や生命の起源の解明につながる可能性があります。
「はやぶさ」は実験機でしたが、「はやぶさ2」は確実に小惑星の鉱物を持ち帰るのがミッションです。
エンジンの出力を20%増強し、多くの通信が可能なアンテナを装備するなどの改良が加えられています。