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鳥獣による農作物被害対策に新たな視点

平成26年7月28日の南日本新聞、むらおこし便りによりますと、姶良市柊野(くきの)集落では、
深刻な鳥獣被害から回復しつつあります。
柊野(くきの)集落は、姶良市北西部に位置する山間地域です。
イノシシやシカ、サルなどによる農作物被害が拡大し、個別の対策では解決していませんでした。
そこで、集落ぐるみで対策をとることとし、住民全員で鳥獣害の勉強会を開きました。
集落の環境や被害の状況を点検し、侵入防止柵の設置場所を決定しました。
柵の設置後も、やぶ払いや電気柵の漏電点検、サルの追い払いにも集落ぐるみで取り組みました。
その結果、もっとも被害の大きかった、イノシシによる水稲被害がほぼ解決しました。
生産意欲が回復し、集落に活気が戻ってきています。
勉強会や現場での取り組みがきっかけとなり、互いの意思の疎通が円滑になってきたことなど、
予想外の効果も出ています。

鳥獣害対策に関しては、平成26年6月13日の南日本新聞によりますと、被害の大きい宮崎県で、
新しい視点を加えた取り組みが県を中心に行われています。
宮崎県内の鳥獣被害は、2000年に約1億8500万円でしたが、その後ほぼ毎年のように増加しています。
2012年から詳細な本格調査を実施したこともあり、2012年の被害総額は約11億円という膨大な数字となりました。
2012年の作物別被害の1位は野菜です。
約3億3千万円で、全体の約3割を占めています。
被害対策としての鳥獣捕獲数は、2006年に1万6653頭、20122年には3万4231頭にまで増加しています。
しかし、捕獲数は増えても被害が減少しない現状があります。

そこで、宮崎県は捕獲だけに頼らない、新しい視点の鳥獣害対策に取り組みました。
2012年度に「鳥獣被害対策緊急プロジェクト」を立ち上げ、部局横断的な「特命チーム」を設置しました。
副知事を司令塔とし、自然環境のほか農政や土木、警察など16課が、総合的な取り組みを開始しました。
農作物被害対策、捕獲対策、森林被害・環境対策の三部会を設置しました。
また、農家への技術支援や人材育成を行う「鳥獣被害対策支援センター」を開設しました。
近畿中国四国農業研究センター専門員で国内の鳥獣被害問題の第一人者である井上雅央氏(65)を顧問として招き、
行政職員や農家らに技術指導を行ってもらっています。
モデル地区として28か所を指定し、鳥獣に強い集落環境づくりを進めています。

鳥獣被害対策支援センターでは、以下のような順番で農家に指導します。
1.どんな物が餌になるのか、学習する
2.自分たちの集落を点検し、餌を放置しない農地を作る
3.柵で農地を守り、人慣れさせないよう徹底して追い払う
4.それでも被害が減らない場合に捕獲する
このメニューを見て、半信半疑だった農家もあったようですが、1.2.の段階で被害が減ることもあり、大きな効果がでています。
集落に鳥獣がやってくるのは、無造作に放置された作物や牧草、生ごみなども原因になっています。
これは、無自覚な餌付けが行われているのと同じ状態です。
サルやイノシシが、このような餌に数回ありつくと、学習効果が得られます。
したがって、無自覚な餌付けになるようなものを集落から撤去する作業が重要になります。
「人間の住む所に出てきたらだめだ」というメッセージを動物に発信することの重要性を、鳥獣被害対策支援センターでは強調しています。